頭痛外来
Headache Outpatient Clinic
「頭痛」は、「ガンガン」、「ズキズキ」、「締め付けられる」、「重い感じ」などの様々な表現で訴えられます。これらの頭痛を多くの人は「頭痛」として一括りで考え、市販薬(OTC医薬品)や医療機関で処方された消炎鎮痛剤で対処されているのが現実と思われます。しかし「頭痛」はその症状の表現が多彩であることから、頭痛としての診断名も多彩にあります。また一般的な「頭痛」の多くは画像検査をしても原因が見つからない「一次性頭痛」と検査によって原因が特定される「二次性頭痛」に分類されます。
問診により頭痛の性状を詳細に確認し、その上でそれぞれの頭痛に必要な検査および治療を行います。頭痛の性状や種類、特に二次性頭痛の多くは入院が必要なため、適切な専門医療機関と連携して治療にあたります。下記に当院で診断した頭痛一覧を掲載します。
症状 |
診断数 |
片頭痛 |
492例 |
緊張型頭痛 |
306例 |
薬物乱用頭痛 |
31例 |
後頭神経痛 |
140例 |
一次性穿刺様頭痛 |
80例 |
群発頭痛 |
17例 |
三叉神経痛/三叉神経ニューロパチー |
11例 |
発作性片側頭痛 |
20例 |
一時性運動時頭痛 |
4例 |
一次性咳嗽性頭痛 |
2例 |
性行為に伴う一時性頭痛 |
1例 |
睡眠時頭痛 |
1例 |
体位性頻脈症候群(POTS) |
6例 |
(2024年12月31日現在)
つまり「頭痛」にたいして鎮痛剤を服用することが解決なのかという問題があり、また自己判断によって鎮痛剤を常用・乱用していることにより、「薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)」となっている可能性も考える必要があります。
当院では、それぞれの「頭痛」に対してできるだけ診断名を確定させたうえで、それぞれの頭痛に対して適切な治療薬や生活習慣の指導について提案させていただいております。
頭痛でお悩みの方がいればお気軽にご相談いただければと思います。
片頭痛について
片頭痛は重症化すると仕事や家事に支障を来します。そのため日常生活上の支障を抱えながら過ごす負担はさまざまな病気の中で2番目に大きいといわれています。日本頭痛学会が 2005 年にまとめた「京都頭痛宣言」では,片頭痛発作により毎日 60 万人の日本人が苦痛を感じ,人間らしい生活を妨げられているとされ,片頭痛による生産性低下による日本経済への損失は年間 2,880 億円と試算されています。そのため片頭痛は適切に診断し治療介入を行う必要がある病気と言えます
片頭痛の症状について
片頭痛発作は「ズキズキ」「ガンガン」と脈打つような強い痛みが引き起こされます。身体を動かすと痛みが悪化し、光、音、においに敏感になるのが特徴です。また頭痛時に吐き気や嘔吐などを伴うこともあります。頭の片側だけが痛いとは限らず、両側が痛むこともあります。また、めまいや、肩やくびのこりも関係しており、「肩こりが原因だと思っていた頭痛が、実は片頭痛だった」ということもよくあります。
片頭痛は頭痛だけでなく、頭痛のない時期(発作間欠期)にも不快感、倦怠感、集中力低下等の症状を呈すことがあるため、日々の生活にさまざまな影響をきたします。
片頭痛の周期は様々で月1~2回程度の人もいれば月10回前後になる人もいます。
片頭痛は、ストレスまたはストレスからの開放、寝不足、寝すぎ、飲酒、天候や月経前後などにより誘発されます
片頭痛の治療について
片頭痛治療は①頭痛発作時の急性期治療と➁頭痛頻度を抑える予防療法の2本柱となります。
患者様には治療にあたり頭痛記録(頭痛ダイアリー)の記載をお願いしており、その記録をもとに患者様個々のライフスタイルに合わせた治療薬の提案をさせて頂きます。
急性期治療においては、トリプタン製剤やラスミジタン、NSAIDsなどを使用します。
予防療法においては、経口内服薬(トリプタノール、ミグシス、インデラルetc)と注射薬(CGRP製剤:エムガルティ、アジョビ、アイモビーク)を使用し治療にあたります。初回治療においては経口内服薬の予防薬から開始し、発作頻度の改善が見られない場合には患者様と相談し注射薬の導入を検討します。特にこのCGRP製剤は2021年に発売され有意な片頭痛改善効果が示されており、実臨床においても、急性期治療薬を飲まなくても日常生活が送れるようになった患者様が多くいらっしゃいます
最期に・・・
片頭痛治療は飛躍的に進歩しており、先述の新薬(CGRP製剤:エムガルティ、アジョビ、アイモビーク)の登場により多くの片頭痛患者さんにとっての福音となっています。
しかし一方で社会からは『ただの症状としての痛み』という誤解を受けることが多く、患者さんの周囲から正しくその辛さを理解されづらい環境です。また患者さん自身も「我慢があたりまえ」と考えがちとなってしまい、適切に治療を受けきれていない患者さんも多くいらっしゃいます。
上述の通り片頭痛の症状は発作時の頭痛だけではなく、発作間欠期の症状も日常生活に十分に支障を来し得ます。頭痛により日常生活に支障を来しお悩みの場合は、お気軽にご相談ください